「心が前向きになるドラマをつくりたい」という實光 美々佳。「日本を笑顔にするようなドラマをつくりたい」という檀之上 卓道。「地方に寄り添うドラマをつくりたい」という林 雪花。テレビドラマのプロデューサーを目指す3人に助監督の日々を聞いた。
各部署を束ねて大きな力にしていく。いい撮影ができるように。
林ドラマの助監督は、監督を助ける仕事。撮影現場では監督がトップにいて、その下が助監督。技術部や美術部、衣装部などは助監督の周りにいるイメージ。助監督は監督の演出プランを実現する、いい撮影をするというゴールに向かって、すべての部署を巻き込んで準備を進めていきます。スタッフが50人以上いる現場もあるので、各部署のハブというか、各部署を束ねて大きな力にしていく接着剤みたいな感じかな。
檀之上助監督の中でも持ち場があって、チーフ、2nd、3rd、4thの4つに分かれています。以前は1人ずつでしたが、働き方改革もあって今はそれぞれ2人体制。シフトを組んで交代で現場を担当しています。
實光チーフは現場を指揮する人。スムーズに撮影を進めていくために、美術部、技術部、音声部など各部署との調整役。2ndは「人」に関する準備をする人。衣装さんやメイクさんの手配、エキストラさんの手配など。3rdは「モノ」に関する準備をする人。美術品やら小道具やら。主人公のスマホに映るメッセージアプリ風の画面とか、数秒しか映らないものも丁寧につくっていく。
林4thは、先輩助監督のサポート。資料のコピー、リサーチ、許可取り、子役の話し相手、役者さんの代役、見物人の交通整理……。基本的に何でもやる。役者さん周りのことも多いかな。控え室で待機している役者さんを呼びに行ったり、屋外の撮影では役者さんに日傘を差したり、お水を渡したり。役者さんと接するときは、気を遣いますね。やりたくて仕方なかった仕事なので、どんな状況でも全力で楽しむようにしています。
檀之上あと大事だな、面白いなと思うのが、台本に書かれていない細かい設定を考えていく作業。たとえば「こういう会社で働く主人公」という設定だったら「お給料はこれくらいで、これくらいの部屋に住んでいるかな。だとしたら、こんな美術が要るかな」とか。台本を読み込んで、想像を膨らませて、書かれていない部分を考える。登場人物が働くお店の名前、通っている病院の名前、考えることはたくさん。監督やプロデューサーに提案して採用されると、ドラマのワンシーンになるのが嬉しい。実際にドラマを見たときは「俺のやつ!」って、たまらなかった。
實光演出に関わってくる部分だから、監督やほかの助監督も考えるけど、2nd、3rdは撮影準備が始まると本当に慌ただしくて。一番台本を読み込む時間がある4thが、頑張ってくれるよね。
助監督は、演出を学び、関係性をつくる時期。
實光ドラマは、いろんな人の力を借りてつくられていくもの。だから人と人とのコミュニケーションはとても大事で、相手を尊敬して、感謝して、正直でいる。信頼関係が生まれると現場も円滑になっていくから。「助監督って、こんなに喋る仕事だったのか」って思うくらい、関係部署の人とはコミュニケーションを取っているかな。
林いろんな部署の人から、いろんなことを聞かれますよね。でも正直、4thの私には分からないことの方が多い。怒られることもあるけれど、適当に答えたらかえって迷惑をかけるので、そこは素直に「分かりません」って言うようにしています。
檀之上分かるなあ。現場がうまく周るよう、先回りして考えておかないといけないのに、悔しいくらいに気づけない。だからせめて明るく元気に動き回ろうと。他部署の仕事でも率先して手伝うとか。それをすることで、名前を覚えてもらって、コミュニケーションも生まれていく。
實光名前を覚えてもらうのって、大事だよね。役者さんに覚えてもらって「プロデューサーになったら一緒に仕事しましょう」と言ってもらえると、とても励みになるし。スタッフさんでも「あの人にやってもらおうよ」とかあるだろうし。監督やプロデューサーも「次の作品にあいつを呼ぼう」と思うきっかけにもなる。そういう積み重ねが将来、自分の作品をつくる上で生きてくるはずだし。助監督って演出について学ぶ時期でもあると同時に、関係性づくりの時期でもあるのかなと思う。
それぞれの原点。それぞれのプロデュースしたいドラマ。
實光中学時代、学校生活がうまくいかない時期があって。同じころ『野ブタ。をプロデュース』というドラマをやっていた。物語の登場人物に自分を重ねて、気持ちがとても楽になった。その影響が大きくて。誰かの気持ちを前向きにするドラマの仕事、すごく素敵だなと。私の原点がそこにあるから「明日も頑張ってみようかな」と前向きな気持ちになるテレビドラマをつくりたい。人の優しさや温かさを描くような、愛のあるドラマをプロデュースしたいなあ。
檀之上見た人が前向きになるって、いいですよね。僕の場合は、日曜劇場ですかね。『陸王』『下町ロケット』『半沢直樹』……。家族みんなでドラマを見ながら、ああだこうだと話をする。ザ・お茶の間というか、昔からある家族の過ごし方。とても好きな時間でした。そんな環境で育ってきたから「なんかいい家族だな。ほろり」みたいな、家族ドラマがつくりたい。それで結婚に憧れたり、家庭を持ちたいという人が増えたら、国としても明るくなるんじゃないかなと。
林なんか分かります。私は北海道出身なんですけど、昔、余市町を舞台にした『ヤンキー母校に帰る』というドラマがあって。ひいおじいちゃんが余市町にいたから、よく行っていたんです。知っている場所がドラマに出ていて、嬉しかった。ドラマファンがロケ地を訪ねたら、地元の人も嬉しいだろうし。地方に寄り添うというか、そこで暮らす人たちが地元を誇れるようなドラマをつくりたいですね。私が一番ハマって、プロデューサーを目指すきっかけとなったドラマが『木更津キャッツアイ』。今思えば、なんとなく共通点があるような気もします。
實光今はまだ助監督だけど、いつかプロデューサーになって、自分が思い描くテレビドラマをつくっていきたいね。
WORKS
SCHEDULE OF ONE DAY - 實光

撮影の準備!
撮影が始まる前に出演者の方々が支度でスタンバイ場所に入ってきます。衣裳部、メイク部、持ち道具の方々とその日のスケジュールの段取りを打合せします。今日も一日がんばるぞー!

今日のお着替え予定
打合せした結果をこのようにメモします。どの出演者の方が何回お着替えをするかなど…メモの内容は人によって様々ですが、私はこのように書いています!

エキストラさん集合!
第一現場はカフェでの撮影。撮影開始!の前に、エキストラさんたちにどんなシーンをどのように撮るかを説明します。「皆さんは、会社員の設定で~、主婦の設定で~」など、それぞれの役割をお伝えして、その設定に沿ってお芝居していただきます。

ついに撮影開始!
ドライリハーサルが終わって、どのようにどのカットを撮っていくのか相談中。これをカメラ打ちといいます。監督、助監督、記録、技術チームとその日の台本を見ながら打合せ。白熱するときは、この打ち合わせで30分以上かかることも!でも、この打ち合わせが非常に大事なのです!!

撮影真っ最中
エキストラさんの動きについて、監督と相談しています。ただ座っているだけでも、電話をしてもらったり、パソコンを打ってもらったりと、不自然なお芝居にならないようにします。また、席に座りに行くなどのお芝居をつけるときは、タイミングも大切なので、監督から指導いただきながら撮影は進んでいきます!

やっと昼休憩!
第一現場の撮影が終わって、移動です!本日は横浜。天気があまりにもよかったので記念に一枚。

休憩時間は休憩するべし!
休憩時間が長くもらえたので、スタッフのみんなとカフェカーにコーヒーを飲みに行きました!こういった空き時間は、街をぶらぶらしたり、いろんなスタッフと話したり、息抜きをします!寒すぎて、急遽上着を買ったこともあります。

お芝居は、だれが相手でも…
今度は、スタジオ内での撮影に。2歳の赤ちゃんにご飯を食べさせるシーンでのスタンドイン。(出演者の代わりに位置などを明確にしておく)顔の角度などの確認もあるので、なるべく出演者になりきってお芝居します!赤ちゃんも心なしか喜んでくれている気がします(゜o゜)

夜まで撮影は続きます!
さて、最終現場で!夜の撮影は大変で、明かりの調整を念入りに行ってからリハーサルも開始。この日の撮影は大掛かりで、こういったクレーンに載って撮影をしました!朝から夜まで、みんな総出で撮影を行うのがドラマの醍醐味です!
SCHEDULE OF ONE DAY - 檀之上

撮影準備
撮影開始時間までに撮影準備を整えます。カメラを回さずに演技のリハーサルをするドライを経て、どのようなカットをどのように撮るか打ち合わせをし、エキストラさんの動き確認などを経て撮影開始です。

撮影開始 第一現場
この日は病院での撮影でした。場合によってはエキストラとして出演することもあります。今回は救急隊員のエキストラとして出演しました。

現場移動
第一現場の撮影が終了すると、マイクロバスで第二現場へ移動します。バスの中でも次の現場の段取りを勉強します。長時間移動の時は、眠気に負けて爆睡してしまうこともあります。

第二現場
次の現場に到着し、撮影再開です。ロケ撮影の場合、お昼のシーンは日が落ちてしまう前に撮り切らなければなりません。これはお昼に限ったことではありませんが、撮影が押さないよう、全スタッフが全力で走り回ります。

昼休憩
待ちに待ったお昼休憩です。この日はロケ弁を食べた後、スタッフたちと現場近くのケーキ屋さんでクレープを買いました。行ったことがない場所へたくさん行けるのもロケ撮影の醍醐味です。

撮影再開
お昼休憩の後、撮影が再開されます。昼休憩を経て気分もリフレッシュしたところで撮影再開です!画角や照明の当て方などを確認するために、役者さんの代役としてカメラの前に立つ「スタンドイン」も助監督の仕事の一つです。この時は切ない顔をするシーンだったので、全力で切ない顔をしています。

撮影終了
本日の撮影は以上です!撤収作業と明日の準備をして勤務終了です!お疲れ様でした!明日の撮影も頑張るぞー!
SCHEDULE OF ONE DAY - 林

顔合わせ・本読みの準備
机や椅子を並べたり、飲み物を用意したと部屋のセッティングをします。プロデューサー、監督、脚本家、役者の名前が書いてある「バリ」と言われる紙を貼るのも仕事です。メイキング映像で観てきた会場をセッティングしてるのは不思議な感覚でした。

顔合わせ・本読み
ドラマに関係している人たちが初めてほぼ全員集合するのが顔合わせです。俳優部、プロデューサー、監督、脚本家をはじめ演出部、制作部、美術部、技術部、衣装メイク部、宣伝部、役者さんの事務所関係者など参加する人の数は100を余裕で超えます。本読みでは、助監督は参加できなかった役者さんの代読をすることもあります。

時間設定
ドラマの中の時間の設定をするのは4th助監督の仕事のひとつです。セリフやト書きから時間に関するヒントを見つけ設定していきます。他にも様々な打ち合わせで監督が「ここは夜がいい」「このシーンは前のシーンから3時間後くらいかな」とヒントをくださるのでそれを聞き逃さないようにし反映します。時間設定が完成したら記録さんと監督のOKをもらいスタッフに配ります。

劇用の作り物
ドラマの中でキーアイテムとなる修学旅行のしおりの内容を考えました。北海道の女子高生だった頃の気持ちを思い出しながら書きました。ドラマ内では上白石萌音さんご本人の字になっているので是非ご覧ください。