いきなり飛び込んでしまった、テレビ業界。
小さいころからテレビが好きで、友達とよく「昨日のアレがさぁ」なんて盛り上がっていました。テレビはいつも、話題の中心。自分を夢中にさせる、スーパースターのような存在でした。なんとなく「テレビ番組をつくる仕事っていいな」と思うようになったんです。そこまで真剣には考えていなかったんですが、大学を中退することになってしまって。そういえば「テレビの仕事したかったよな」と思い出して、放送関係の専門学校に入りました。
あるとき専門学校の先生から「現場がどういうところか見てきたら」と制作会社を紹介されたんです。いざ行ってみたら即採用。「明日から頼むね」みたいな。さすがに戸惑いました(笑)。思わぬ形で学生&サブディレクターの両立生活が始まりました。その流れで社員になって、4年間お世話になりました。2009年に今の会社に移ったんです。
最初の番組はTBS朝の情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』。3か月ほどサブディレクターをしました。ほとんどが雑用の仕事。それでも学生の自分は、現場のスピード感についてくのに精一杯。次々と用事を頼まれるので、漏れがないよう逐一メモを取って、走り回って。生放送の情報番組はどんな作業が必要で、現場でどう動いたらいいかを、体で覚えていきました。その後TBS『報道特集』でサブディレクター、チーフサブディレクターを経験し、BS日テレのドキュメンタリー番組『キズナのチカラ』でディレクターデビュー。2009年の転職を機にTBSの夕方の報道情報番組『イブニングワイド』(『Nスタ』の前身番組)にディレクターとして参加し、2016年からチーフディレクターをしています。
夕方の報道情報番組『Nスタ』、チーフディレクターの仕事
『Nスタ』には番組で流すVTRを制作する部隊と、スタジオでの展開を考える部隊があります。自分はVTR制作のチーフディレクター。3時間の放送で扱うニュースのラインアップは編集長(チーフプロデューサー)が考え、当日の朝、8人いるチーフディレクターに担当が割り当てられます。担当ニュースが決まったら、誰に何を取材するか、どこでどんな画を撮るかを考え、チームを編成。夕方の生放送に向けてVTRづくりを始めます。
朝の情報番組では「曜日班」と呼ばれる各曜日担当のチームがあるんですが、夕方の報道情報番組では毎日チーム編成が違うんです。今はチーフディレクターの自分と4人くらいのディレクターでチームを組むケースが多いですね。現場に行くディレクターたちに指示を出し、取材してきた映像を集約。ナレーション原稿を書き、編集と音入れをして、1本のVTRに仕上げていくのが自分の仕事です。
ニュースだからこそ「何をどう見せるか」にこだわりたい。
ニュースは「いついつこういうことがありました」という現実の出来事がベースにあります。大きな話題は各局同時に扱うわけで、見せ方が命。どう見せたら面白いか、興味を持ってもらえるか。視点の置き方、切り口、表現手法……見せ方を考える作業は、ゼロからイチをつくる作業。大変ですが、やりがいもあります。
現場を取材してニュースを伝えるという点では、ディレクターも記者も同じ。両者の違いは、見せ方、伝え方にあると思っていて。記者は、事実を正確にいち早く伝えていく仕事。伝えられる事実、情報が多いほどいい。ディレクターは、本質的な部分を残し、その他を削ぎ落としていく仕事だと思うんです。
自分が面白いと思うニュース番組のVTRは、分かりやすくてシンプルなVTR。削ぎ落としてはいけない部分を削ぎ落とすと、間違ったニュースになってしまうので、ギリギリのラインを狙いながら、分かりやすくてシンプルで興味を持ってもらえるVTRづくりを心がけています。
大切にしているのは「責任をとる」ということ。
ディレクターの仕事の善し悪しは、出来上がったVTRで判断されます。チーフディレクターとして大切にしているのは、責任をとるということ。VTRの出来が良くなければ、現場取材をしたディレクターではなく、そういう取材を指示した自分に責任があるわけですから。仲間を裏切らないというか、そこは意識しています。
また、現場取材のディレクターが、ギリギリまで諦めずに撮ってきた映像、粘って撮ってきたインタビューなどがあれば、編集長にかけあってラインアップの順番やスタジオの展開を変えてもらうなどして、放送で使えるように動きます。生放送での調整は大変ですが、現場でギリギリまで粘ったモノの中に、視聴者に一番伝わることがあるはずなので。それは他局との差であり、取材現場の思いに応えることでもあり、視聴者に対する責任でもあると思います。
一生懸命取材したものが放送に出ると、現場担当スタッフも活気づくんです。楽しい現場、活気ある現場の取材映像は躍動感があるというか、出来上がりのVTRもパワーを感じるものになりますから。自分も若いころ先輩にやってもらって嬉しかったですし、チーフディレクターという部下を率いる立場になった今、自分がやってもらって嬉しかったことは後輩たちにどんどんやってあげながら番組を盛り上げていきたいと思っています。
WORKS
SCHEDULE OF ONE DAY

出社
前日から朝までのニュースをチェック

番組全体打ち合わせ
担当するニュースが決定 番組3時間の中でどの時間帯に放送するかが決まる

取材先を決める、ナレーション原稿作成開始
同じニュースを担当するチームのメンバーと相談し、取材先を決め、誰が取材に行くかを相談。どういう切り口、目線で取材するのか、意思統一をはかる その後、現場ディレクターと連絡を取り合い、原稿作成

昼ニュースを見ながら、昼食
基本的に昼食は社内で 昼ニュースをチェック

ナレーション原稿完成、編集開始
取材してきた映像を見て、原稿を完成させる。番組編集長、デスクのチェックを受け、編集開始

編集終了
編集マンと共に取材映像を編集。ナレーション、音楽、テロップをつけ、VTRを完成させる
番組終了
その日の放送を総括する反省会に出席

翌日に番組で扱うニュースの打ち合わせ
翌日にどんなニュースがあるのか、引き続き扱うニュースは何なのかを打ち合わせ。準備をして帰宅。