スポーツイベントに携わりたくて、テレビを選んだ。
学生時代にイベントプロモーションを学んでいたこともあり「スポーツイベントに関わる仕事がしたい」と思っていました。スポーツイベントに携われて、その魅力を多くの人に伝えられる仕事は何か。自分のイメージに一番近かったのが、テレビでした。実際、自分も好きなサッカーをよくテレビで見ていましたから。それで就職活動を始めたころ、学校の就職課に行って。企業研究用の端末で「スポーツ」で検索したら、ヒットしたのは1件。TBSスパークルでした。応募したら早い段階で内定をいただき、就職活動は終了。結局、1社しか受けずに、卒業前から現場で働かせてもらいました。
最初の番組は、TBS朝の情報番組『みのもんたの朝ズバッ!』。スポーツコーナーのサブディレクターとして、2年間担当しました。アスリートへのインタビューの仕方、撮影した映像の編集の仕方など、基本的なスキルを身に付けました。今はボクシングを中心に、ワールドカップサッカー、オリンピック、世界陸上、世界バレーなど、スポーツイベントの中継ディレクターとVTRディレクターをしています。
VTRのディレクターと、中継ディレクター。
スポーツ番組のディレクターは、中継のディレクターとVTRのディレクターに分けられます。VTRディレクターは、試合の数日前〜前日に放送する事前番組や当日試合の合間に流すVTRをつくる人。ボクシングの場合、同じディレクターが1人の選手をずっと担当します。自分は世界チャンピオンの井岡一翔選手を担当。もう10年ほどになります。試合が組まれたら数か月前から取材を始め「どんな思いで臨むのか」「どんなトレー二ングをしているのか」など、注目ポイントや試合の見どころが分かるVTRをつくっていきます。対戦相手が外国人選手か日本人選手かによって、VTRのつくり方も変えています。
中継ディレクターは試合当日の生放送を担当する人。ボクシング中継では、1試合あたり10人前後。中継車の中から全体を指揮するチーフディレクターを筆頭に、実況席でアナウンサーや解説者に指示を出すディレクター、両陣営のコーナー周りにスタンバイして選手やセコンドの動きを中継車に伝えるディレクター、テレビ局のスタジオを仕切るフロアディレクターがいます。各ディレクターとのチームプレーは特に大事。映像のライブ感を左右するほど。自分が中継ディレクターとして参加するときは、主に実況席のディレクターを担当します。試合展開を見ながら実況席に指示を出すので、瞬発力が求められますね。
アスリートが輝く瞬間。自分のことのように嬉しい。
井岡選手に限らず、いろいろな競技で取材をさせてもらうと、アスリートの苦悩や努力を目にします。それはきっと、普段なら見せたくない部分で、自分たちを信頼してくれたからこそ見せてくれた部分。取材期間が長くなると、自然とアスリートに感情移入してしまいます。それだけに勝利の瞬間や努力が報われた瞬間に立ち会えると、自分のことのように嬉しく感じます。そしてその瞬間を、同じ感情を、自分たちの中継で視聴者に伝えていける。この仕事のやりがいです。
WORKS
SCHEDULE OF ONE DAY

制作スタッフ打ち合わせ
この日の夜に行われるボクシング中継に向け、現場制作スタッフと本社制作スタッフで打ち合わせ。どのような中継番組で構成するのかなど、疑問点を最終確認しながら全員で意思疎通を図る。

技術スタッフ・アナウンサーと打合せ
試合会場となる後楽園ホールで技術(カメラマン・音声・照明)スタッフ、実況アナウンサーとイベント進行や番組内容など打ち合わせ。どのような照明でどんな画を撮って中継していくか。アナウンサーにはどのような内容を実況してほしいかなど、各ポジションごとに細かく確認をしながら現場全スタッフで共有します。

選手取材
試合直前の選手にコンディションや試合に向けての想いなど取材して実況アナウンサーと情報を共有します。

中継本番
試合中継本番は、リングサイドに設置した放送席で実況アナウンサーと解説者の方々にコメントの内容やタイミングなど試合展開に合わせて指示を出していきます。今、目の前で起こっていることを伝えていくため瞬時の判断力が大事になってきます。